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「むー……」
リトの部屋の中、うっすらと湯気を立てるコップを前にして、一人の犬娘が小麦色の頬をまん丸に膨らませていた。
「どうしたの?メィヌってば」
壁際にある小さな暖炉の前で、リトはくるりと振り向いた。手元ではくぷくぷと音をたてる小鍋をかき混ぜながら、流れる眉をハの字に寄せる。
「うー、リトぉ……さっきの子、だぁれ?」
きゅっと結んだ唇の下でもう一度唸ってみせてから、メィヌはリトに尋ねてきた。明るい色の毛並みが光る両手に顎を乗せて、置かれたままのお茶には目もくれないでリトを見つめている。
「さっきのって……。あぁ、ミューネアのこと?」
「知らないよぉ!なんか、練り土みたいな色の髪の毛してて、こぉんなツノ生やしてた子だけど」
顔の下から手を上げて、犬娘はこめかみの上に手首をつけた。丸まった指先が耳の前を横切り、頬の横まで垂れ下がる。ふくれた顔のままでそんな格好をしているメィヌの姿に、リトは長い箸を操る手で口元を隠してくすりと笑った。
「う、うん、ミューネアだね、それなら」
「で……ん、それ誰?」
メィヌは尖らせた唇から牙の先を覗かせて、上目遣いになってリトを見る。持ち上がっていた腕は再び机の上に戻って、傾いだ顔を顎と頬で支えている。
「森の中に住んでる魔属の子だよ。今度のお祭りに使うローメリーを頼んでたの」
「ろぉめりぃ……そんなの、ボク知らないよ?」
聞き覚えのない単語に、メィヌは責めるような口ぶりで質問を続ける。ついでに目も細めてみせるが、その下の瞳は好奇心を隠せずに輝き始めていた。
暖炉に溜めてある火の霊力を、燻した絞り板で抑えながら、リトは顔を戻して、背中ごしに話を続ける。
「普段は使わないからね。煮出した精でスープを作るんだけど、感覚を鋭くしてくれる力があるから、霊媒に良いんだよ」
「ふーん……。でも、なんであの子に頼むの?」
「この辺りの土じゃ、あんまり大きく育たないから。苗はあたしが分けるんだけどね」
毛玉のような手の上で首をかくりと捩って、メィヌはリトの背中を見つめた。薄い色のブラウスと白い肌の境界線が溶け合い、シンプルなエプロンの紐がまるで水着の背中のように思えてくる。
「……じゃあ、あの子はリトの薬草を、わざわざリトのために育ててくれた、ってこと?」
「うーん、そういうわけでもないかな?最近はあたしが使ってる、っていうだけだし……」
鍋から箸を上げたリトは、小さな柄杓で煮汁をすくって一口含んだ。しばらく静かに味を確かめてから、絞りを閉じて鍋をゆっくりと冷まし始める。
そんなリトの後姿を眺めながら、メィヌは気分をそのまま口に出した。
「ふーん。むつかしいんだねぇ……」
「ん?何か言った?」
暖炉の火を落としてから、リトはまたメィヌの方を振り向いた。切れ長の目を細めて、メィヌはくたりとテーブルに頭を転がしていた。悩み事があります、と顔に書かれた様子でテーブルクロスを見るともなく見て、指先から出した爪でこりこりと布地を引っ掻いている。
「ねぇ、メィヌ」
「うー……」
リトは、火から下ろしたばかりの小鍋を持って、突っ伏したメィヌの隣に歩いてきた。それから、小ぶりな柄杓で鍋の端をこんこんと叩いて、仲良しの犬娘に声を掛ける。
「もぅ、メィヌってば」
「……なに?」
のろのろと、メィヌはリトの方へ身体を起こす。その口元に、赤琥珀の色をした水面を乗せた柄杓が差し出された。
「そんなに気になるなら、試しに飲んでみる?ローメリーのエキス」
「はふ?」
首を傾げるメィヌの前で、リトの顔も、目線を合わせるようにして斜めになっていた。
■ □ ■ □
リトの口元から、紅茶に似た色をした滴が零れ落ちる。つう、ととろみを帯びて伸びた水の糸は、エルフのお腹に擦れる耳にしたたり、白い和毛をしっとりと濡らした。
「はぁ……リトのにおい、すごいよぉ……」
椅子に掛けたままのリトの腰には、犬娘が惚けた目で、その顔を押しつけていた。牙の覗く口元を緩ませて、先刻までスカートの中に隠されていた部分に熱の篭った吐息を吹きこむ。
「そ、そんなにすごくなんかぁ、ふうぅ……」
「今日は暑かったもんねぇ……やっぱりリトでも、汗かいちゃうよねぇ」
リトのスカートは床に引き摺り下ろされ、清楚な下着がむき出しになっていた。その中心はくっきりと盛り上がり、メィヌの顔を覆うように布地を宙に浮かせている。
薄い生地を通して染みるメィヌの呼吸が素肌をくすぐり、濃厚なままのローメリーに酔ったリトの意識を塗り替えていく。
「ら、だから、メィヌってばぁ何言って……はぅっ?」
リトに口移しでエキスを飲ませたその口で、メィヌは布に包まれたリトの肉実をぱくりと包みこんだ。下着越しに伝わる温もりの意味をリトが気づく前に唇を離して、味見の感想を持ち主に伝えてやる。
「えへへぇ。リトのおっぱい甘かったけどぉ、ココはえっちなにおいがするよぉ?」
「やぁ……そんなのら、やなのぉ……」
前歯を使って何度もそこを甘噛みしながら、その度に染み出す露を鼻先に塗りつけるようにして、メィヌはエルフの身体の香りを楽しんでいた。
「にゅふふ。なにかなぁ、リト?」
もともと利く鼻は薬草の効能で余計に研ぎ澄まされ、多少離れていても、まだ衣服に包まれていても、リトの身体から浮き立つ香気を敏感に感じとってしまう。
「メィヌぅ、こんなに飲ませて……ひどいよぉ」
晩春の太陽の光、照らされた布地が含んだ暖かさ、そしてメィヌより先に訪ねてきていた相手のかすかな残り香。それらをかき消すようにして、甘やかな匂いが白い肌から漂いだしてくる。
「はむぅ……ふむっ。リトってば、もうぱんつのにおい、判んなくなってきたよ?」
「め、メィヌのいじわるぅ……っ!」
「リトのほうがいじわるだもんっ。ボクにないしょでプレゼントもらったりして」
はっきりと口に出して、メィヌは目の前で揺れる肉幹の先に、今度は横からぱくりと噛みついた。
「え……?」
「言ってくれたら、んぁ、ボクだって、お花の一つくらい探してきたのにぃ」
なおもリトに文句を言いながら、メィヌは歯の先だけが触れる弱さで、リトの敏感な部分を転がし続ける。下着の中に捕まったそこは、荒さを増すリトの呼吸に合わせて、時折ぴくりと跳ねて、布地にできた染みを少しずつ広げてゆく。
「あん……ぷ、プレゼントなんかじゃなくって、お仕事で使う……ひんっ」
言い募るリトの言葉は、しかし途中で、短い声に遮られてしまう。太腿の間では、メィヌが再びリトの屹立の先を口に含み、先実を吊る筋を舌でずりずりと擦りあげていた。
「あ、はぁう……んあ、はぁっ……!」
メィヌの唇から飲まされたのは、希釈も調製もしていない、原液そのもののローメリーのエキス。その強さは、儀礼で使われるものの何倍にも及ぶ。『神』霊に対する影響を強く感じるリトにとっては、意識は普段通りに保ったまま、感覚と力とを無理やり倍増させられるような効果があった。
「あ、あ……メィヌ……」
股間で蠢く口淫の感触は、一枚の薄布ではとても遮られ得ず、直接触れられているのと変わらない鮮烈さでリトの背筋を揺さぶってくる。
ケモノならではの凹凸の激しい舌に舐められ、腰の筋に力がこもる度、肉幹の中を通ってとろみを溶かした露が染み出す。それは出口に辿り着いた途端、湿った布地に押し広げられ、先実の薄い肌越しに、熱さをリト自身に返してくる。
「め、メィヌ、うっ……!」
椅子に圧しつけられたままの秘華も、太腿に置かれたメィヌの手から生まれた揺れすら感じ取って、屹立の先に開いた口以上に潤いをたたえている。その匂いにまで気がついているのかいないのか、腰に絡みついた犬娘は、一向に下着を剥いでくれる気配もない。
それでも、リトの屹立はぐいぐいとメィヌの口の中に押しこまれてゆく。淡い色の下着は犬娘の歯先を食いこまされながら、肉幹の形をくっきりと現していた。
「ぅん……はぁ、はぁっ、はむん……」
こぼれそうなほど溢れた唾をリトの下着に吸わせて、メィヌは舌を更に伸ばした。色々な汁にふやけてきたリトの性器は濃厚な匂いを湧き立たせ、メィヌの口の中をいっぱいに満たしている。
「は、あぅっ……!」
ぷっくりと膨れた先実を飲みこめそうな奥にまでリトのモノをくわえこんで、メィヌはぐるりと頭を回した。突き立った屹立に持ち上げられた下着は、脇に大きく透き間を作り、今やほとんど、リトの腰回りを隠す役目を果たしていなかった。
「リトの出すとこ、見ちゃおーっと」
横合いから差しこまれた舌が、リトの肉幹に、直にぺとりとはりついた。細やかな肌が舌先をくすぐり、ぬるりと濡れた感覚が、独特の味とともに、メィヌの喉を肉欲に酔わせる。
「あっ、あ……!」
瞳を揺らすリトの股間で、膨らみきった先実がぐるりと捻るように刺激される。続いて、幹ごと引き抜かれる感触。それがリトの意識に広がった次の瞬間に、熱い舌がリトの屹立に広がった傘の下、引き攣れた皮の先にある赤い半月を、こそぐように激しく擦りたてた。
「……あぁぁぁっ!!」
「ひゃぶっ!?」
声とともに解放された霊力で部屋の空気までを震わせながら、リトは激しく精を放った。
先実を覆った下着を通り過ぎて、白い流れは宙に飛び、目の前で口元を押さえたメィヌの顔をぱたぱたと叩いてゆく。
「はぁぁっ……!!」
脚を、腰を、背筋を内側から搾られるような性感が続いている。身体の中で共鳴する感覚が瞼の裏を飛び回り、上半身がぐらぐらと揺れた。
「あ……また、出、てる……」
リトは目を泳がせながら声を漏らした。ふと下を見ると、リトを達しさせたメィヌが、むしゃぶりついていた股間を見たまま、小さく唇を開いている。
「ねぇ、メィヌ……?」
顔を眼下の犬娘に向けて、リトはゆっくりと問いかけた。しばらくの時間が経ってから、メィヌがこれまた、ゆっくりと返事をした。
「ん……なに?」
「もっともぉっと、したくなーい?」
見上げた木蓮色の瞳の中で、エルフの二つの目が、小さな満月のように爛々と輝いていた。
(Non sentimentalisme おしまい?)
続きを頂きました! >>> 「マッシュルームマーチ」
公開日:2009/06/16